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精神波量子脳理論

 投稿者:タマ  投稿日:2006年12月 3日(日)13時50分23秒
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  精神波量子脳理論  「神秘体験」(弓月城太郎・作)より

 私はその夜、ゴードン邸の二階の自室で、昼間スミス氏から受け取った報告書と論文のコピーをもとに、『精神波量子脳理論』の構想をまとめた。
 私は理論体系を構築するにあたって、夥しい量の計算をこなした。ひと晩の作業量としては相当なものだ。
 作業は深夜に差し掛かり、部屋は神聖な静寂に包まれた。それは神秘的な体験だった。私は神の臨在を感じ、聖霊の与え給うインスピレーションのままにキーを操作し、パソコンのイリュージョン・ディスプレイに表示されるテキスト画面にトランス状態になって書き込んだ。まるで神がお造りになった量子的宇宙の設計図を見せられているかのように。
 私の集中力はいつにも増して高まり、疲労は微塵も感じなかった。
 明滅する光のように突如として脳裏に浮かぶ焔{ひ}のような文字。知覚力の増大を感じる。目の前を虚数的実在が現実の幾倍にも増してリアリティを持つ実在として私の視覚野を掠めてゆく。
 ――二階微分することによって連続体曲率となる、計量テンソルの非ユニタリな変換は、真空の相転移による場の影響の変化として位相の変分に相当し、真空の励起状態を生成する。これはゲージ変換に伴う位相変位が、場の量子論の効果によってエネルギーに転換されることを意味する。連続的相転移のテンソル積は連続体の最下層にまで及ぶ。隠れた変数の存在により、重力の相互作用の揺らぎはなく、他の交換子による相互作用の揺らぎもない。非局所的に相互作用することによる位相変位とエネルギーが等価変換されるアラン・スミスによるボーム量子力学の新しい場の量子論。それは整然とした数式で綴られた、量子重力理論を含む統一場理論の完成した姿だった。
 ボームのモデルは通常の量子力学の性質をすべて導くことができる。その内奥には『神の階梯』へと繋がる階層構造的な広大な精神の海が広がっている。そのとき私の意識は方程式の奏でる天上の調べに乗って精神の高みへと運ばれ、私はそこで壮大な宇宙のシンフォニーを聴いた。
 時空的広がりをもつ遍在波の量子軌跡の記述は、パイロット波、すなわち素粒子の明確な位置と運動量の隠れた変数を伴った形式での時間発展するシュレーディンガー波動方程式で表わされる。またそれを空間微分した方程式は、粒子の運動を決定するベクトルポテンシャル を意味する。
 精神波の正体はこの遍在波なのだ。そのデータ構造は、意味と意味との結び付きを記述するデータベース・フレーム構造のニューラルネット表現であるセルアセンブリと相同であり、時系列的なニューロンの発火及び抑制のパターンと一対一線形写像の対応関係をなしている。
 その記述に要する数学的構造は、可分な性質を持つヒルベルト空間上に定義される、無限次元の立体構造を持つ、時間発展するベクトル波である。その総体であるフォック空間の時間的断面における状態ベクトルの各座標軸への射影は、機能ニューロン群ユニット(コラム)の入力起点である興奮性(或いは抑制性)ニューロンの持つ固有共振要素を正規直交系の基底ベクトルとして、その整数倍として表わされる。
 状態ベクトルの複素線形的加算による座標軸上の射影成分の整数倍化は、ニューロンの書き込みモードでのパルス重複度の整数倍化、すなわち情報の「重み付け」を意味している。
 また長い間不明とされていた記憶の「保存」と「脳内(及び脳外)での遍在性・全体性」の謎は、量子エンタングルメント とアハラノフ・ボーム効果、及び形態因果作用による時空間を隔てた相互作用により説明される。
 これらのことから精神波を媒体とした情報処理には、エンタングルした電子群のスピン配列によって表される「波形」と、それに対応するベクトルポテンシャルの密度分布による「重み付け」のふたつの指標が用いられていることがわかる。
 主に側頭葉で行なわれている記憶の参照は、時空間に跨る精神波の「波形の相同性」と「重み付け」による、任意の分節点における区間積分値の閾値による判定によって遂行される。この場合、ニューロンは「波形検出器」と「積分加算器」の両方の特徴を発揮する。「積分加算器」としての機能が強調される場合には、波形の欠損部分についての情報の補完が行なわれていることを意味するが、これは前頭連合野との連携処理となり、飛躍的ではあるがやや不正確な情報処理となる。
 脳の各所で分散処理された知覚の候補となるニューロン信号を伴った精神波信号は、そのグループごとの重み付けに従って競合抑制的に選択され、連合してひとつの統一した意識体へと紡ぎ上げられる。最終的に勝ち残った強い精神波信号のグループは、前頭連合野において自意識の表層へと昇ってくる。ここではゲーデル命題の決定を含む、波形の欠損部分の情報の補完という作業が待っている。
「知覚」(自意識または自己認識)は精神波波形全体を単に自己干渉させる最も単純な形式のゲーデル命題であり、「思考」は、「注意」によって微小部分の重み付けを増幅させ、増幅された部分での最適化を逐次行なう、知覚よりも複雑な形式のゲーデル命題と考えられる。しかし、いずれの作業による最適化も徹底的に遂行されるわけではなく、処理の高速化を計るため、重み付けによって割り切った、かなり粗い近似が行なわれる。
 続いて前頭連合野での飛躍的な処理について数理物理的側面からの考察を進める。
 ゲーデル命題を構成し、自意識を創出する自己言及的論理構造のニューラルネット表現は、必然的に再帰的ニューロン結合のループを構成する。
 再帰的ニューロン結合のループは、その物理的特性において、電子波の自己干渉、すなわちコヒーレントな波の干渉を許容する構造となっている。その構造は、位相空間上での状態ベクトルの複素線形的加算を行なう一種の超相対論的粒子加速器とみなすことができ、電子のエネルギー運動量の増加をもたらさない位相空間上での線形加速を実現している。位相空間上の潜在的アインシュタイン禁止領域への状態ベクトルの伸長から重力による波束の客観的収縮という過程は、超光速の電子の移動、すなわち量子トンネル効果という結果をもたらす。その間、自己誘導透明化現象によって熱雑音は遮断されていると考えねばならない。また、そのときに連れ帰る電子の情報ポテンシャルはミンコフスキー時空光円錐外部の情報であり、場の遮断を前提とした未来の情報ポテンシャルを反映する。
 ではゲーデル命題を決定へと導く情報エントロピーの減少はどこからもたらされるのだろうか? そのためには「力の場」と「意味の場」の連続体について論じる必要がある。
 量子力学の標準的解釈である「コペンハーゲン解釈」とは異なり、「ボームの解釈」を量子像として採用した場合の最大の特徴は、「相補性の原理」に伴って、瞬時にして量子ポテンシャルが時空間に遍在する性質から、場の遮断(場の勾配の凍結)を生じることである。
 このことは熱力学の第一法則及び第二法則の破れを予言するだけでなく、波動関数の非局所的閉じ込めをも説明する。
 二原子分子の核スピンがJ結合と呼ばれる互いに逆向きのスピンで結合している状態で、二つの原子が分裂して遠ざかっていくような場合にも、この相関は非局所的に保たれることが知られている。
 このことは粒子性から波動性への状態変化に伴う相転移面内部で波動関数の非局所的閉じ込めが行なわれていることを示唆している。ここでは相対論時空を量子化して考えねばならない。すなわち量子エンタングルメントの生成である。
 また四つの力の場には、それぞれ遮断面が存在するのだが、原子核周回軌道上の電子に作用する力は、このうち電磁気力と重力だけなので、ここではその二つの力の場についてのみ考慮すればよい。
 電磁場の遮断面(アレフⅠ‐Ⅱ連続体境界面)での電子の相転移は、位相‐エネルギー変換系であり、位相空間での位置情報の変化分に電磁場の勾配を掛け合わせた分のエネルギーを光子として湧出させる。
 二量体の構造を持つチューブリン蛋白質の電気的特性は、極性を持ったダイポール構造をしており、場の量子論の効果が現われる原子の凝集場を形成している。
 重力による波束の客観的収縮によって、場の遮断状態が解除されると、波動状態の軌跡から粒子状態の軌跡への遷移が生じ、そのときに放出される電磁波は脳内磁場との相互作用によりスピンの三値状態に対応した特徴あるスペクトルとなる(ゼーマン効果)。
 また放出された電磁波は、チューブリン蛋白質の重合体であるマイクロチューブルの導波管構造の中のボーズ場で束ねられ、スペクトルの違いによって検波されると共に、電流に変換されることにより、興奮性及び抑制性の入力信号として静止膜電位を変動させるための電荷を供給する。
 以上が情報の出力系の説明である。次にアレフⅠ‐Ⅱ連続体境界面内部で起きている物理的作用について述べる。
 位相空間である複素時空において、エンタングルした電子群のスピン配列とそれに対応するベクトルポテンシャルの密度分布は、全体的な意味情報としての情報エントロピーを定義する。それは「意味の場」におけるひとつの量として扱われ、その相同性の積算値は作用素として働く(シェルドレイクの形態因果作用)。その作用は、時空間を超越した過去や量子的超並列性によって展開される多世界解釈的可能性世界の中から最適解を吸引する力として働く。
 なお量子エンタングルメントによる相関は古典的結合よりも強いため、運動が起きても情報が損なわれることはない。「意味の場」においては「力の場」と双対をなす形式で、「情報エントロピー保存の法則」が成り立つのである。
 しかし相転移によって、さらに上位連続体との境界面を突破すると、この保存則は破られてくる。
 量子的宇宙の構造は粒子的に閉じた系ではなく、それはちょうど海洋に浮かぶ島々のごとく海底で繋がっているような構造となっている。
 アレフⅡ‐Ⅲ連続体境界面。重力場の遮断面。この境界面では同時にスピンネットワークの場も遮断され、高次情報エントロピー(高次の意味の結び付き)を定義するレジストネットワークの場に関係性が移行する。
 ここで「レジスト」という造語について触れておかなければならない。連星パルサーのパルス周期のずれに見られる慣性系の運動エネルギーと重力波のエネルギーの変換は、本来は量子論的な相互作用のモデルで説明されなければならない問題である。P・ディラックは量子重力理論の定式化のために重力と計量との間に交換関係を課したが、スミスモデルでは、重力場の遮断面内で生じる「空間の引き摺り」による位相変位が一重力子の励起分に相当する大きさに達すると、重力子を放出し、波束の客観的収縮を生じるものとしている。スミスは、この「空間の引き摺り」を生じさせる物質粒子の持つ属性を「レジスト」と名付けている。
 さて、アレフⅢの階梯で生じる量子エンタングルメントは相転移によっても保存されるため、連続体間の写像の受け渡しは、量子エンタングルメントという共通の作用によって架橋されていると考えられる。
 遍在波としての精神波の数理的構造が可分な性質を持つヒルベルト空間上に定義される立体波となることは既に述べた。意味と意味との連合は、この立体波どうしの干渉であり、このヒルベルト行列の要素を係数として表わされる不定項を含む連立非線形常微分方程式の解として与えられる。
 しかし自意識の創出にかかわる立体波の自己干渉のパターンでは、このアレフⅡヒルベルト行列から得られる連立解は、不完全性定理によって不定となることが分かる。
 なぜならば、この連立解は、不定項を含んだ個々の非線形常微分方程式の可解群を意味するハミング距離座標系でのn次元リーマン多様体どうしの接点の軌跡として表わされ、自己言及的組み合わせの場合には、同心体となって解が完全不定となるからである。
 アレフⅡの集合体の中では、このゲーデル命題を決定することができない。決定される条件は、連立非線形常微分方程式が可解となる条件を満たす第二の方程式がアレフⅢの階梯からの写像として与えられる場合である。
 しかし、ただちにこの解は得られるだろう。その理論的根拠は、量子的非局所性によってアレフⅢの階梯の情報ポテンシャルの未来曲線が決定されるため、その情報を得ることによって連立を取ることが可能だからである。自意識はこのときただちに創出される。この未来曲線は自意識の創出にとって必要不可欠であるとともに目的論的情報処理のトレンドラインをなしている。
 問題なのはアレフⅢの階梯でのゲーデル命題の決定である。精神波波形の情報欠損部分の補完は、原則として記憶を参照する形式で行なわれる。そのときにはアレフⅢの高次波形の連続性に基づいて補完が行なわれる。もしこの補完が適合であるなら細部の最適化は後回しにして、ひとまず計算終了となる。しかし高次情報エントロピーを減少させる最適解が記憶の中に存在しないなら、それらはすべて不適合となり、ループの循環は終了せず、手掛かりを未来に求めることになる。ループの循環が継続すると、ベクトルポテンシャルの複素線形的加算によって、形態因果作用を増大させつつ、情報ポテンシャルも未来へと時間発展し、ついに何らかの波形を引き寄せる。
 問題解決のための目的論的思考においては、アレフⅢの高次情報エントロピーの減少条件を満たす最適解を、アレフⅡとそれに対応するアレフⅢの量子的超並列性による多世界解釈的可能性世界の組み合わせの中から時空間を越える形態因果作用によって吸引し、補完が行なわれているものと推察される。この手順は量子誤り訂正を必要としない量子計算に相当する。単一の記憶を用いた補完によって完遂しない細部の最適化や、記憶どうしをどのように組み合わせるのかといった問題の解決は、このようにして行なわれているものと思われる。またNP可算の領域を越えてゲーデル命題が決定される理由は、ここにヘッジファンドの原理による情報エントロピーの減少分が含まれるためである。
 メタ原理の法則性から下位の原理の法則性を決定する最確値が求まるその仕組みは変分原理によるものであるが、「最小自乗法による近似の原理」に似ていると言えるかもしれない。
 以上のことから脳は一種のタイムマシンであると結論付けられるが、量子的非局所性によってもたらされた未来の情報は、場の遮断を前提とした常に変わり得る未来の「予定」であり、「予測」に過ぎないことが分かる。これは真性のパラドックスではなく、疑似タイムパラドックスなのである。
「時間と自意識」「時間と自由意志」の関係について述べるならば、自意識の本質は「自己認識」、自由意志の本質は「自己決定」であり、それらふたつは共に自己言及的論理構造とタイムパラドックスの所産と言える。量子ポテンシャルの遍在速度を無限大にとり、時間的に捩じれたフィードバックのタイムスパンを漸近的にゼロに近づけると、疑似タイムパラドックスと真性タイムパラドックスは同値となり、この瞬間にアレフⅡのゲーデル命題は決定され、このとき自意識の創出と自己決定が起きるが、アレフⅢの未来方向では時間的に捩じれたフィードバックの自己言及性により、その階梯でのゲーデル命題は現時刻において必ず非決定となり、自由意志の存在が保証される。
 それ故に人間の自意識は「現在」という特殊な時刻においてのみ存在している。「時間の流れ」とは、非決定であったものが決定されてゆく過程なのである。
 また、これまで多肢に渡ってに述べてきた知見は、「創造性」や「悟り」といった高次の意味の結び付きを説明する。天啓のように突如として自意識の表層に浮かぶその答えは、それを得るためのプロセスを言語化することができない。
 これは推測の域を出ない話であるが、瞑想時における神秘体験(光の体験)のうち、知覚の消滅を伴う光の体験は、自意識の対象をアレフⅢレベルのゲーデル命題に絞り込む心身相関的な操作であるため、その非決定性が知覚を消滅させるものと考えられる。一方、その周辺に位置する、より穏やかな「涅槃{ねはん}」と呼ばれる変性意識状態では、アレフⅢレベルの情報経路が強化され、「創造性」や「悟り」といった精神機能が賦活されるのかもしれない。
 以上が意味の理解をもとに記憶と記憶を結び付け、より高度に抽象化された観念への紡ぎ上げを行なう「観念連合」という人間精神の高次機能の説明である。またこのことは、情報エントロピーの逓減{ていげん}に主眼を置いたソフトウェア的側面での自己組織化のメカニズムの説明と言い換えることもできる。
 一方、ハードウェア的側面での自己組織化は、そうして得られた結果のトップダウンの表出であると言えよう。ニューラルネットの自己組織化においては、ゲーデル命題を決定に導く解が得られたときに、再帰的ニューロン結合を循環している信号は、コラムの共振要素によってアドレスされた精神波の経路を通って分岐する。一度このブレイクスルーが起きると、同じ経路に侵入した信号は次からは精神波を媒体とする経路を通って流れ、その経路である形態形成場のベクトルポテンシャルに複素線形的強化を与える。この情報は大脳辺縁系にも送られ、扁桃体からの重み付けに従って、海馬の反響回路によって繰り返しトレースされ、同様のメカニズムで形態形成場のベクトルポテンシャルに複素線形的強化を与える。
 すでに解明された海馬の特性から、海馬が重要度に応じて記憶を取捨選択していることが知られている。記憶の重要度の指標、それはベクトルポテンシャルの重複度ではなく、読み出しモードでのパルス頻度、すなわち単位時間当たりの重力子の放出頻度である。重複度はそれを生じさせる必要条件ではあるが十分条件ではない。扁桃体からの重み付けが大きい情報や、最適化が未分化な目新しい情報、ゲーデル命題の解となる再帰的ループからの分岐情報は、この値が大きいのである。すなわち二次加工された記憶(長期記憶)の本質は、重力子(南部ゴールドストーン量子)の放出の痕跡であり、新たな量子エンタングルメント生成の痕跡であると言えよう。
 記憶の書き込みモードでの重み付けが「ベクトルポテンシャルの大きさ」であるのに対し、読み出しモードでは「重力子の放出頻度」となっている点に特に注意を要する。数値表現としては重み付けが「絶対値」を、スピンの情報ビットが「符号」を意味している。
 海馬の歯状回はミエリン鞘を欠くことによる高度なシナプス可塑性によって加工すべき情報を再現し、反響回路で繰り返しトレースすることで、レミニセンス現象 を伴うふるい分けを行なうと共に、脳内の目的となる箇所に発芽の指令を出しているものと思われる。
 すなわちベクトルポテンシャルの複素線形的加算によって自己組織化の過程が発動し、その形態形成場の情報を頼りにニューロンの軸索伸長から標的ニューロンへのシナプス形成が行なわれる。この作業は生命体に固有の分子化学的反応のプロセスを統御するOSが、情報処理システムの内部構造として形態形成場に精神波の形式でストックされていることによりサポートされている。
 かくして処理の過程はハードウェア化され自動化されるために、以降は自意識を創出しない刺激‐反応のプロセスが可能となる。
 処理過程の自動化は、情報量の少ない曖昧な状況下で迅速に意思決定を迫られるようなケースで威力を発揮する。波形の欠損部分の情報の補完として、経験に照らし合わせて最も確からしい処理ルーチンが自動的に呼び出されるため、ある程度の不正確さを許容した上で、環境に適応的なプログラムが迅速に構成されるからである。
 なおニューラルネット及び精神波ネットの自己組織化には外部環境からの刺激入力が必要不可欠であるが、このことは様々なバリエーションのゲーデル命題をタスクとして受け取り処理してゆくことにより新たな処理ルーチンを獲得することを意味している。
 以上が、問題解決のためのプログラムをソフトウェア的に獲得しつつ、ハードウェア化してゆくニューラルネットの自己組織化の全貌である。
 *
 私は明け方までかかって、論文の下書きをテキスト画面に殴り書きし、必要となる理論式のすべてを導出した。
 その計算の過程で私はとても重大な発見を遂げた。アレフⅢの階梯でのゲーデル命題がアレフⅣの階梯からの写像によって決定されるのではなく、アレフⅡ‐Ⅲ連続体境界面で発生する情報エントロピーの減少によって決定されることの数学的裏付けを得たことだ。そのプロセスは閉じたエントロピー・サイクルとはならず、エントロピーの減少方向に、スパイラル状に開いたエントロピー・サイクルとなる。
 未来の予測をもとに現在の意思決定を行なうメカニズムは、時間的に捩じれたフィードバックであり、論理的矛盾のない擬似的タイムパラドックスである。この機構を前提とした「ヘッジファンドの原理」による情報エントロピーの減少が、アレフⅢレベルでのゲーデル命題を漸近的に決定に導くのである。
 すなわち「法則と初期条件が決まれば、あとはすべての状態が決定する」という決定論に帰結されるのではなく、「法則によって未来の状態を近似的に予測し得るが、法則そのものが実時間の経過と共に変化してゆき、どのように変化するのかは不定である」というのが、精神現象や生命現象を含めた宇宙の非決定性の本質だったのだ。
 私が発見した「ヘッジファンドの原理」は定理ではなく、ZFC公理系に新たに付け加えられるべき「第10番目の公理」だったのだ。
 それは「ゲーデルの完全性定理」への復帰であり、アレフⅣの階梯が物理的意味を持たない、という限定的意味での「一般連続体定理」の証明を意味するものだった。量子的宇宙の構造は無限階梯からなる上方向に開いた発散する宇宙ではなく、内部的にエントロピーを減少させエネルギーを湧き立たせてゆく、閉じた完全性を持つ熱的に非平衡な宇宙だったのだ。
 そのことはまた、宇宙にとっての生命の存在意義を私たち人間に問い直す機会を提供している。すなわち生命活動・精神活動の結果、確実に生命場の情報エントロピーは減少しているのである。それは次の宇宙の誕生に必要となるアレフⅢレベルの高次情報エントロピーの減少をもたらすだろう。より組織化され高度な精神活動を行なう生命体であればあるほど、そのことに寄与する貢献度は高いと思われる。そこに進化の持つ意義を私は見い出すのだった。
 *
 ああ! 朝日が昇る。レース越しにエレガントな緑のシルエットが霞んで見える。世界は黎明の時を迎え、森羅万象は光の世界へと立ち返ってゆく。窓の外では小鳥たちが歌を歌い、神の子であるこの小さき私を祝福した。
 私は窓を開け、外の世界を眺めた。
 ゴードン邸の自室の窓からは、朝靄に煙るローレンスの田園風景が一望できた。濃厚な大気の中で息づく緑の生命{いのち}。それは私にとって見慣れた風景だったが、いつにも増して世界は輝いて見えた。朝日の中で生命が輝いていた。
 
 
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